Gallery Talk by Hiro SUGIYAMA+Satoshi OKADA「WORM HOLE(2)」
August 5, 7pm-

 

 

岡田(以下OK) :まずは自己紹介します。「WORM HOLE episode3」出品作家の大田黒さん、柴田さん、内田君、そしてmagical運営メンバーのヒロ杉山さん、そして私、岡田です。よろしくお願いします。最初にマジカルについてと、WORM HOLEについてちょっと僕から話をしようと思います。マジカルは今年1月に5人の運営メンバーで立ち上げたギャラリーです。コマーシャルギャラリーとは違い、簡単に言えばオルタナティブスペース以上、コマーシャルギャラリー未満というようなスペースです。今後活躍して欲しい作家達にこのギャラリーをきっかけに、チャレンジしていってほしい、そういう趣旨で始めたスペースです。マジカルという名は、僕が数年前から行なっていた「魔術的芸術展」からきています。ある社会学者が近代合理主義の世界を脱魔術化社会と言っていて、その弊害みたいなものに対してのささやかな抵抗、のような意味を込めて魔術という言葉を使っています。そこから発生してマジカルという名前になりました。WORM HOLEというのは、物理学者でホーキングという人がいるのですが、何かの病気で車椅子に乗っていて、半ば自分の声を出せない人なのです。彼のWORM HOLE理論というのがあって、簡単に言えばいろいろな次元というのが虫の穴のようなもので繋がっていて重なり合っている、ということを唱えています。このギャラリーの最初はグループ展だったのですが、いろいろな作家の作品が重なり合っている姿、それがWORM HOLEに重なるということでその冠をつけました。それ以降グループ展は全部WORM HOLEとなっています。
それでは、それぞれ自己紹介を兼ねて、今回のグループ展に参加した感想を聞いていきたいと思います。大田黒さんから話していただけますか。

大田黒(以下OT): こんにちは、大田黒です。私の作品は、こちらの壁にある白黒の紙とロール紙です。いつもこういう短時間で描けるようなものを、大量消費されるような幅の広い紙に描いています。

OK: こっちの作品は?説明はないの?これ色使っているじゃない。

OT: あまり背景に色を使わないんです。物の色にしか使わないんですね。一応、にわとり人間ということで、抽象的になりすぎてあまりわからないと思うんですけど、塩化ビニールシートにアクリルで描いています。

ヒロ杉山(以下H): 色を使わないっていうことに関しては何かあるんですか?

OT: 色を使えないっていうのもあるんですけど、記号的なものになってしまうんですね。記号で存在しているというか、そういうところをつきつめていっちゃうと色がちょっとおろそかになっちゃうんです。

H: 今までずっと使ってこなかったんですか?

OT: 使っても物が有している色しか使ってないですね。

OK: この作品なんか観ていると、ほとんど最小限の形だけなんだけど、色だけでにわとりっていうのは何か分かりますよねえ。そのへんが面白いなあと思うんだけど。

H: 切り抜くタイプの、あの作品もドローイングって呼んでいいんですかね?あれと、こういう普通の紙に描く作品とは平行して制作してきているんですか?自分の中では区別化がある?

OT: そうですね、ちょっと距離が変わって、形を整えたりしているので。

OK: じゃあとりあえず次は柴田さん。

柴田(以下S): こんにちは、柴田です。今回が展示というものは初めてに近く、他のアーティストの方の作品を見るのも多分初めてぐらいなので、すごいなあ、という表現ではちょっと軽いけど、それぐらいしか出ないというか、はっきり言ってちょっとびっくりしています。こういう場所で自分がやっていることが信じられないというか。わたしはまだ18歳で、専門的な勉強もしたことなくて、ただ2歳頃からずっと好きで描いていただけなんです。だから、専門的に勉強した方がいいのかなと思う反面、勉強せずにここまで出来たことが嬉しく思ったりもします。

OK: 柴田さんはほとんど独学ですよね?

S: はい。

OK: ずっと人に見せようということはなくて、延々と書きためていたといったかんじなんですか?

S: そうです、最初はチラシの裏とか、学校で、中学までしか行っていなくて高校は中退しちゃったんですけど、授業中もずっと絵を描いていて、一日の中で鉛筆を持っている時間がほとんどでした。

OK: なんか日記とか自分の確認みたいなかんじなんでしょうね。

S: もともとすごく人見知りというか、人に言ったりするのが苦手なぶん言葉代わり、のような。

OK: 今回の展示で、くちゃくちゃっと丸めた紙を後から敢えてくっ付けたっていうのが面白いなあと思ったんですが、その意図は何なんでしょう?

S: これは吉井さんに教わって。私は普段平面しかやらないので、ちょっと出っぱってみてもいいね、という話でオープニングの前日にやってみました。

OK: ちょっと遊んでみたようなかんじなのかな。普段そういう丸めたものをいっぱい作っているとかそういうことではない?

S: 作品としてではないんですけど、基本的に丸いものが好きで、よく猫じゃらしとかを集めたりしていますね。

OK: じゃあ、内田君。

内田(以下U): こんばんは。内田耕造です。僕の作品は、ウォールペインティングと、こちらのカラフルな絵です。ウォールペインティングはあまり構造を決めずに、思うがままに描いていったんですが、右の方から、牛から始まって、熊、オレンジみたいな感じになっていきました。

OK: ウォールペインティングを描いている時、何度も形を変えたりして、すごく流動的で、イメージがイメージを作っ

ていくみたいなかんじで、それを見ているのがすごく面白かったです。だいたいウォール系でライブをするときはこういうかんじで進んで行くんですか?

S: はい、そうですね。でもモチーフは前に描いたものを多めに出したり、というかんじで、構図とかはその場で全部下書きなしで。

OK: グループ展に関してはどうですか?

U: やーもう、刺激し合いですよね。楽しいです。

OK: 内田さんの場合はヒロさんのメリットもあって、数年前からコンタクトをとっていたという話を聞いているのですが、彼の絵の変遷みたいなものも見てきてヒロさんはどうですか?

H: そうですね、最初に作品見せてもらったのは3年前ですかね。で、それから2、3ヶ月に1回くらい僕のところに絵を見せに来てくれて、他にも僕のところにはそういう人がたくさんいて、多い時には月に5、6人見せにきます。アドバイスしてまたおいでねって言って、戻ってくる人と二度と来ない人がいるけれど、彼は戻ってくる方の人で、僕の言ったことに対して何らかの反応を起こして、新しい絵を描いて来るという繰り返しを3年間ちょくちょくやっていました。この展示の前まではちょっと間が空いてたかな、1年は空いていなかったかもしれないけど。今回の展示に向けて推薦をするきっかけになったのは、志賀さんが「内田君の絵が面白くなったからちょっと見てよ」ということで、志賀さんの事務所に行って見せてもらったんです。割と今までどちらかというと抽象表現、その中に具象的なものが入っているような絵でしたが、一挙に具象に転換していて、色使いも今までだとモノトーンなイメージだったのが、一挙に原色や蛍光色がでてきていました。彼の中できっかけ的なことがあって、大きく変わった時期ではありましたね。僕は2、3枚見せてもらって、それが面白かったのですぐに会議に出して、今回の展示に推薦したんです。ウォールペーパーの写真では今までいろいろ見せてもらったんですけど、実際に本物を見るのは初めてで、描いているところ見るのも初めてだったんです。僕もそうなんですけど、何かこれを描こうっていうよりは描かされている、というかんじの印象を受けました。イタコ状態というようなかんじで自然に手が動いていって絵を作っていくタイプなんじゃないかなあと思いますね。

U: それがまた楽しいというか。全然想像もしてないこと、むちゃくちゃ描いたものの中に動物とか見えてきたり、そこからすごく広がっていくのが楽しいです。

OK: その辺の話に繋がりますが、私が作家の方に会って一番興味があるのは、最初に描きはじめる時に動機づけるものというか、何が作品を描かせるジェネレーターになっているのかというところなんです。柴田さんは日々のコミュニケーションに近い感覚で作品が生まれる感じがするけれど、大田黒さんはどうですか?始めに描きたいものがふわっと浮かんで描くとか、描かずにはいれない衝動とか、取り憑いたみたいに描いちゃうとか、いろんなパターンがあると思いますが、どうですか?

OT: 結果的にはやっぱり描かずにはいられない、ということですね。簡単に言うと、空虚なもののデザインというところでもあるというか。それを感じた時に、じゃあそれを表現しないでそのままにしておくっていうのが、きついんですね。表現にすれば何か面白い、というのではなくて。

OK: 大げさにいえば、自分が世界を認識する、その一つの手段として非言語的に自然というか世界を捉える、そういうことが無意識に働くんですかね?

OT: ただコミュニケーションのひとつとして、言葉ではなく、多くを言える気がして。

OK: 内田君はどうですか?描く動機づけというか。

U: 僕も小さい頃からすごく好きで、紙を親が買ってくれてそこに書いたり、幼稚園でいろんな人に「すごいね」と言われて調子に乗っちゃったりとか。

OK: 何のために描いている?

U: やはり日々言えないこと、溜まっていることを発散する手段ではありますね。

H: 基本的に絵を描いている子って、どこかしらちょっとコミュニケーションが下手だったり、内にこもるタイプが絵に走るっていうのはあるんじゃないですかね。僕もそうなんですけど。

OK: 僕は普段、精神科の医療を手伝っていますが、事例的なパターンの中で、自分で日記を書いたりして何かを発散するのと同じようなかんじで、絵を描くことによって非常に救われている人っているんですよね。それはセルフカウンセリングに近いもので、自己との対話ではないけれど、そこで何らかのコミュニケーションが自分の中であるみたいです。自己完結かもしれないけど。人間ってある一定力のコミュニケーションが達成すると楽になることがあるみたいですね。大先輩のヒロさんはどんな感じですか?

H: やっぱり小さい頃絵を描くというのは日常でした。僕は幼稚園に行かなかったんです。姉は幼稚園行ったんですけど、親の考えで僕は行かなかった。だから小学校に上がる前の何年間ほとんど一人で過ごしていたんですよ。近所の友達はみんな幼稚園に行っているので、一人になる時間がすごく多くて、そのときに始めたのが絵だったのかもしれない。歳をとってもそのままずっと描いていました。僕は歯医者になろうとしていたんで、その浪人時代に受験勉強の反動みたいなかんじで夜中にいろんな絵を描いてたんですよ。結局、絵のほうが逆転しちゃったんです。代ゼミの医科歯科コースで2年浪人しましたが、歯医者になることが嫌になっちゃって。2年目の夏休みに一挙に爆発して、親に言ったんです。僕の中で一大決心だったんだけど、親は割りと軽く「じゃ好きなことやれば」というかんじで、そこからは今の僕の世界が始まるんです。僕は描いている時の興奮度というのかな、それが楽しくて描いてしまいますね。ストレスとかではなく、描いている時に一瞬飛ぶときがあるんですよ。その感覚っていうのは、

OK: 手が動いちゃうというかんじ?

H: 手が動いちゃう。

OK: 頭はその時どんなかんじですか?

H: 頭は、時と場合により違うんです。変な話ですけど、ある時は誰かと会話しながら描いているような状況。「赤が良いかなー?」って言ったら誰かが「青が良い」って言う。

OK: もちろん自分の中で、ですよね?

H:はい、自分の中でそういう状況に陥る時がたまにありますね。

OK: あとヒロさんは今エンライトメントという所で映像表現の領域で色々作品を作っていらっしゃいますが、そういった作品に於ける感覚も同じようなものですか?

H: そこがまたちょっと違うんですよね。あれはやはりコンピューターを使って、どちらかというとスタッフに指示を出しているので、そのときはもうちょっと理性が働いているというか、ちょっと左脳的な感覚ですね。自分で手を動かす時はちょっと右脳な感じ。
 筆を使って動かしている感覚というのは、手から脳に何か刺激が行くというかんじ。震動ではないんですけど。それはやはりマックではダメで、大きなキャンパスに絵の具を塗って筆でドローイングしている状況とか、鉛筆でこすっている状況の時に起きることが多いですね。

OK: 医学の領域でも身体の各部から逆にフィールバックするというシステムはあるんですね。   アスリートや優れた運動選手は筋肉から逆に脳に指令を出していて、それが上手くいくと非常に速く走れたり、いろいろ巧みに動けたりするということも最近わかってきたようです。要するに手を使った足の運動をするわけですから、手をどんどん動かしているうちに、それによって脳が刺激されて、また別の手の動きに変わっていく。
それでは次に、アーティストになった経過を知るのには直接的に得た話だけ聞いていてもわからないので、今度はちょっと視点を変えて、今他の分野でどんなことに関心があるのかというのを聞いてみたいと思います。

OT:楽器が好きなので、ホルンを大学時代にサークルでやっていました。その延長でアンサンブル、でもバンドのようなものに呼んでもらっていますね。私は作曲などをするわけではないんですが、楽器が面白くてやっています。

OK:アーティストとして作品作りつつも、絶えず(楽器を)やっている感じ?

OT:楽器も平行にというほどきちんとやっていませんが、感覚の1つとして身体が喜んでいるなと思いますね。絵を描いているときとは違うと言うか。何も規制がないから自由にやっているというのはありますけど。

OK:柴田さんはどうですか?

S:私は、他の同世代の子が大学に行っているので、一番楽しい時期と言われる年代ですけど、友達も少なくて。もともと一人でいることを好むタイプで、ずっと平らな日常を送っているので、ああこれやりたい!とかそういうのがありませんね。

OK:インドア派というか、ずっと家にいる感じ?

S: 逆に家に居ることも好まないんですよ。家から多摩川が近いので、一日中そこにいたりしています。

OK:川を眺めることで感じていると言うか、ボーッとしていることが好きな感じ?あんまり音楽は聴かないの?

S:色んなジャンルの音楽を聴いて、そういうものに刺激を受けたりしますが、何をしていても結局は絵を描くための何かになっている。逆に、何をしていても最後には絵で終わる感じです。基本的に何もしてないです。

OK: 内田くんは結構クラブとかでペインティング描いたりしているから、音楽は結構近い?U:音楽は凄く好きで、中学くらいからラップは聴いていました。自分ではやらないですが、これからやっていこうかなと思っています。音楽も好きですし、あとお笑いが大好きです。

OK:ふと思い出したけど、展示期間中にずっとスイカ置いてあったよね。あれについてちょっと話してくださいよ。

U: 今の時期に合っているかな、と思ったんです。「magical」っていう字にスイカが、いいかなぁって。今日食べられたら、食べたい。

OK:今日来ている方の中には、アーティストの卵というか若い方も多いですよね。ここにいる3人、一番下は18歳ということですけど、どうやってここの展覧会につながったかというところに興味がある方多いと思います。今までこういうギャラリーで発表することに対して、それぞれみなさん努力したり、こんな戦略みたいなものを持ってやってきたとか、そういう話をしましょうか。ボーッとしていたら降ってきたということもあり得ると思うんで、その辺のお話を聴かせていただけますか?

U:僕はさっきも話しましたが、ヒロさんに呼んでいただいて勉強になったり、気づかせてもらったりしました。あと、志賀さんというスプラウトの編集長にもずっと作品を持ち込んで(雑誌に)載せてくださいと言ったりしていました。それで今のスプラウトに載せてもらっています。今回、magicalの展示会の時期とも合いました。

OK:結構良い最初の方に数ページに渡って載っていて、すごいラッキーだよねぇ。

U:ずっと、載りたいなとイメージしていたんですよ。magical の場合も、一度グループ展を2年ほど前にやって、またやらせてもらいたいなぁとイメージしていたんです。そしたらそれが現実になって、すごくビックリしています。

OK:柴田さんはデザインフェスタに出していたというのは聞きましたけど、以前にもアプローチしたことはあるんですか?

S:デザインフェスタに出したのは本当たまたまなんです。デザインフェスタの存在すら知らなかったんですよ。知り合いでアクセサリーを作っている人がいて、その人に「絵を出してみたら?」と言われて。そこで吉井さんに声をかけていただいて、それから何度も作品を持って行きました。さっき内田さんもおっしゃっていましたが、「こうで、こうなってゆきたいな」っていうイメージしていたことに、だんだん近付いていく感じがしました。

OK:さっきの話だと、ボーッとしているけれど絵は描き続けていると。いろいろなタイプの人がいる中で、別に人に見せる必要ないなと自己解決してしまう人もいると思うんですよね。自分で満足出来るものを持続的に作っていければ良い、というタイプの人もいるし、そういう人を決して否定は出来ない。それに対して柴田さんは人に見せて、いろいろな人に認知してもらいたいという気持ちがこの歳ながらもあったということですか?

S:大人しい性格ですが、本当は気性が荒い、というか激しいです。ボーッとして大人しいようで、実は頭の中では大変なことになっている。だから絵を描いている時もすごく忙しいんです、頭の中は。逆に、全部の感情がガーッとなっている中で描いている。だから多分、世の中にも不満を持っていたりする。

H:その不満、聞きたいですね。

OK:僕らもいい歳して、不満だらけなんですよ。

S:不満と今言いましたが、違和感というか。自分自身にも違和感をいだいていて、やってみなくてはならない気がしたんです。動かされた感じですね。それで今こうなっていると思います。

OK:大田黒さんはどうですか?今まで具体的に動いてきた軌跡みたいなのがあれば。

OT:個人的に営業をしてというのはないですが、ここでやることになったのも、先にここで展示をしていた人がいて、その人が出してみない?と。私は本当にコマーシャルとか何も考えず、消そうと思えば抹消できるという立ち位置でずっとやっていました。そこで、では本当に消してしまっても良いのかな?と考えた時に、これから先、長い人生大丈夫だろうかと思ったんです。そして、人に見せるということになるとどうなるのかなって。だから今はコマーシャルという側面についても考え中です。

OK:magicalに参加するようになって、美大や芸大を多少回るようになり、ビックリしたことがいくつかあります。そのひとつに、美大生は「自分はアーティストになって食ってくぞ!」と思っている、と僕は思っていましたが全然そうではないみたいですね。本気で自分はコマーシャルの中でやっていくという意志を持っている人は非常に少ないような感じがあります。あるいは全体の風潮というか学校の中の空気として、未だにコマーシャルに対して軽蔑ではないですが、紳士な態度ではないと言う先生もいるようなことを聞くと、そんなものなんだという感じがしてビックリしました。商業主義的な美術の世界に僕らもシックリはきてなくて、多少の違和感はありますが。この世の中に生きている限りは、持続するためにはどうしたらいいか、ある程度コマーシャルなものとコミットしていかないことには続くことも難しいかなとも思うんです。だからうまく商業主義的なものを利用しながら、自分のやりたいことをつなげていければ、非常に大きくなるんじゃないかな。
この辺で何か今日いらしている方で質問があれば、伺いたいと思います。自分で絵を描いていたりして、発表していきたいなと思う人がもしいれば、どなたかお聞きしたいですね。どなたかいらっしゃいませんか。別にこのことについてだけではなく、何でも良いです。今回の展覧会についてとか、マジカルと言うスペースについてでも。せっかくの機会ですので、どうでしょう?

観客:柴田さんに質問ですが、コミュニケーションというのは一体何に対してのコミュニケーションなのですか。

S:自分に対してのときもあるし、やはりはっきり言って寂しく生きてきたので。

観客:僕も高校生の時に脅迫神経症のようなものになり3年間家から出られなくなったことがあります。その時に絵を描いて過ごしていて。学校もちょっと特殊な形で卒業させてもらえたという感じです。その頃はその後も絵を描いていたんですが、もうその記憶がなくなっちゃっているんですね。最終的に何も出来なくなっちゃって。ちょっと暗い話ですけれどもそれがコミュニケーションというか、自分が死ぬということを前提にすると何か残しておいた方が良いかな、という気持ちで描いていたというのはありますか。

S:近いものもあると思います。病名は付いていないですが私も今カウンセリングには通っているんです。うまく言葉では返せないけど、ちょっと分かります。同じような感覚はありますね。

OK:僕は、本業が精神医療なのですが、別にアーティスト思考ということとは関係なく、やはり本当に今の社会の中で上手く生きて行くというのは大変だと思うんですよね。逆にまともな感性があったら、適応障害起こして当然な世の中なのではないかなと。僕は日々診療の中でそういう方の話を聞いていて、その人達の数の多さを感じています。本当にそういう一見自由で、皆飢える事もなく、そこそこの楽しみを持って生きているようなこの日本だけれども、実は、その深層においては、非常にヤバい世の中になっているなというのは、実感としてあります。精神医療と美術は、「全然違うね」と言われる事もありますが、僕にとっては全く同じなんです。やはりその根本にあるのは、創造力っていうものを非常に衰弱させてしまうような装置に溢れている世の中で、創造力な無いがために、自分の中においてもそうだし自分と他者においてもいろいろなコンフリクトというか、葛藤がでてきてしまっている。それを表面的な流行だとか、あるいはツールで覆い隠してなんとか平静を保っているような社会であるような気がしていますね。そういった中で、アートというのはやはり創造力を、あるいは希望を鍛える場所なのではないかと僕は思います。そういう意味でマジカルにも参加しています。いろいろな所で、同じような話はしていますが、患者さんは、極端に言えば自分の内面の病理を症状として出しているけれど、アーティストは表現ということでその病理を吐き出している側面はありますよね。やはり、絵を見るということはすごく面白いことだし、その中に自分が共通の病理を発見したりすると、またこれがすごく、ぐっときたりする。そういう所があるから僕は参加しているのです。
今回、グル−プ展は3回目ですが、僕らの考えからすると個々の作家がこぢんまりと作品を並べて、この壁はこの作家、あちらの壁はこちらの作家ということではなくて、全体を1つの作品に見立てるような感覚でグル−プ展を企画しています。今回のエピソード3は、グループ展として成功したと思いますが、その辺りヒロさんどうですか。

H: そうですね、グループ展3回目で、1回目2回目と皆悩みながらレイアウトも何回も変えたりしていましたが、我々自身が空間というものをだんだん理解出来てきたのかな。作品量や、どういう作家とどういう作家を繋ぎ合わせるとこういう効果がでるというのが、なんとなく身体で分かってきたのではないかと思います。作家のチョイスが一番重要で、あとは作家のモチベーションもそう、そしてそれ以前の一種の化学反応を起こさせる最初の要素を選ぶというのが、なんとなくつかめてきたのではないかな。

OK: マジカルを始めたのが1月からですから、もう8月ですよね、しばらく経ちましたが積極的に良い若い作家を僕らなりに探して、そしてそういう人達が色んな形で羽ばたいて行ってくれる通過点にここをしてもらえれば良いな、と僕らは思っています。今までも有名なギャラリーで発表する機会をもった人とか、CDジャケットに使ってもらったりだとか、そういう子達が、僕らが当初予想していた以上のペースで実現で来ているような気がします。僕らも責任感をもってこれからも継続して良い作家を発掘し、そして今まで出会った作家を大切にして、少しでも今の美術の世界を活性化させて、社会とのかかわり合いみたいなものを深めて行けるように頑張って行くつもりです。今日はたくさんの方にお集り頂きまして、どうもありがとうございました。